(2023年5月)
中期経営計画概要
1.2022年度中期経営計画の振り返り
2022年度は、引き続きコロナ禍からの経済活動正常化の動きが進む一方、ウクライナ情勢の長期化や資源価格の高騰、及びこれらを背景とした先進各国におけるインフレの加速など、先行き不透明な状況を受け、売上・利益ともに計画値を下回る結果となりました。
連結売上高は、計画値23,000 百万円に対して 4,174 百万円減の 18,826 百万円となりました。
日本セグメントは、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連の受注が堅調に推移したこと等により一定の売上高は確保できました。しかしながら、サプライチェーンの混乱に伴う部品供給不足の長期化等の影響により、売上高は計画値を 1,333 百万円下回る 12,847 百万円となりました。
東アジアセグメントについては、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連並びにスマホ・VR用レンズ関連の受注は堅調に推移しました。一方、上海市のロックダウンに伴う2ヶ月強に亘る工場操業停止の影響を受け、売上高は計画値を 2,320 百 万円下回る 5,430 百万円となりました。
東南アジアセグメントでは、国によりばらつきがあるものの、設備投資は概ね回復基調にあります。ただし、新型コロナウイルス感染拡大前の水準には至っておらず、売上高は計画値を 119 百万円下回る 1,861 百万円となりました。
北中米セグメントについては、自動車関連を中心とした需要は回復しつつあるものの、設備投資の回復までには至らず、売上高は計画地を179百万円下回る191百万円となりました。
損益面については、コスト低減・諸経費の削減を図ってまいりましたが、売上高の減少に伴う売上総利益の減少及び資源価格の高騰等をカバーするには至らず、連結営業利益は計画値から882 百万円減の638百万円、連結経常利益は計画値から657百万円減の813百万円となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失として中国子会社における新型コロナウイルス感染症関連損失や、海外製造子会社における固定資産の減損損失を計上したこと等により、計画値から 649 百万円減の 351 百万円となりました。
2)2022年度経営戦略の振り返り
(1)新規市場、成長分野における事業展開の強化
- 日本、東アジア、東南アジア、北中米の各セグメントにおいて新型コロナウイルス感染拡大による活動制限がありましたが、各国のウイズコロナ政策の定着する中で、情報収集、市場の調査分析、プロモーション強化を進めました。
- 自動車業界のCQI-23への対応を推進しました。
- 次世代電池技術や新製品開発は順調に推移し、次世代電池向けの実機納入も進めました。
- EV用向けのリチウムイオン電池関連では、正極材向けの混合用のミキサー、セパレーターフィルム製造向け材料供給装置や温度調節機器の引合いや受注が、更に増加しました。
- 成形工場における通信対応(IoT)を順次強化しました。
- 光学部品業界では、スマートフォン用レンズ向けの他にVRレンズ向けの需要が増加しました。
- 各種成形工場内における原材料の再利用のための対応を強化しました。
- プラスチック混合技術を活かした地球環境に優しい新素材や複合素材への対応を推進しました。
- 油脂分除去装置の開発、販売に取り組み、各種工場の環境改善を展開中です。
- 開発関連、品質関連でのグループ間における相互指導や情報共有を強化しました。
- 北中米では、アメリカとの国境地域であるメキシコ・ティファナに、2022 年7月サービス拠点を新たに開設。同地域の日系・中国系ユーザ等へのサービス向上を図ります。
- アメリカでは、今後の業容拡大を見込み、2022 年7月に倉庫付き事務所へ移転しました。
(2)既存市場、既存分野での販売拡大と収益力向上
- グループ間での特許関連やライセンスの契約を積極的に行い、機器や機能の向上を推進しました。
- スマートグラスを活用したリモートでのサービス活動を展開しています。
- 東南アジア向けに機器のラインアップを追加し、更なる機器の追加に向けて取組みを進めました。
- 株式会社クボタ計装からのカラートロニック事業譲渡(2023年4月1日)に向け、製造、販売、アフターサービスに関する事業受入の体制を整備しました。
(3)経営基盤の強化とESG 経営の推進
- グループの持続的成長を図っていくうえでの「人的資本の投資」の一環として、カワタテクニカルセンターを建設( 2023 年3月竣工)。メーカーとして必須の技術・技能の伝承並びに当社グループの製品開発力、技術力、営業力、サービス対応力の更なる強化を図ります。
- 基幹システムを含む各種システムの見直しを推進中です。
- 日本では働き方改革関連法案に対応した改正労働基準法に基づき、年5日の年次有給休暇の確実な取得への対応や、労働時間管理の徹底を引き続き推進しています。
- 在宅勤務、リモート会議、時短勤務についても引き続き対応中です。
2.2023年度中期経営計画
(1)事業環境と基本的な考え方
- 各国におけるウイズコロナ政策の浸透により、世界全体でコロナ禍からの経済活動正常化の動きが進む一方、ウクライナ情勢の長期化や資源価格・原材料価格の高騰及びこれを背景とした先進各国におけるインフレの加速など、先行き不透明な状況が継続しています。
- 2021 年にプラスに転じた世界のGDPは、 2022 年にはコロナ禍の影響とそれに伴うサプライチェーンの混乱等の複合的要因により減速傾向にあります。
- 2023 年の世界経済は、急速且つ大幅な回復を期待するのは難しく、また、地政学的リスクの高まりも懸念され、景気の下振れリスクが強まってきています。
- 半導体不足に伴う生産調整、資源価格や原材料価格等の高騰については徐々に安定の方向に向かうとの見方もありますが、景気の先行きは不透明感を増しています。
- EV向けリチウムイオン電池関連等分野では、引き続き積極的な投資が期待されますが、中国の実体経済の先行きは不透明です。
- 中長期的には、プラスチックは世界の人々の生活にとって欠かすことのできない素材であり、今後もさまざまな分野で需要の伸長が期待さます。
- 自動車関連、電子部品関連業界は、裾野も広く今後も伸びが期待できる業界であり、引き続き当社の主力業界として取り組みます。特に、自動車の電動化、自動運転化、車体の軽量化等には積極的に技術や資源を投入します。
- ウイズコロナの環境下、社会の変化に伴うタブレット、PC、スマホ、VR等の通信機器拡大、AI、IoT、5G等のデジタル化推進の動きに対して的確に対応していきます。
- アジア諸国の生活水準向上に伴う汎用品の生産拡大への対応、北中米での自動車、ハイテク業界への取組みを着実に実行します。フィルム・シート等の押出成形分野については、日本での需要に加えて、中国やアジア諸国での生産拡大にも対応していきます。
- 日本国内においては、生産年齢人口の減少やソーシャルディスタンス確保に伴い、今後も省人化投資、生産効率化投資は増加するものと思われます。インターネット通信や交通・建築・土木等の社会インフラ整備に伴う需要にもしっかりと対応し、更に、グローバル展開する日系企業に対しては、日本国内のマザー工場、研究開発センターへのアプローチと実績づくりを強化します。
- 地球レベルでの環境問題(脱炭素、使い捨てプラスチックの削減)に対しては、お客様の生産現場や当社の事業活動において 、また、お客様が生産する製造物を通じて、社会へ貢献していきます。プラスチック削減の動きも見られますが、当社グループは、創業以来培ってきた実績、知見やノウハウ等をベースにリーディングカンパニーとして積極的に対応します。特に、省エネルギー、バイオプラスチック、リサイクルの分野は当社にとってビジネスチャンスになり得ると考えています。
(2)中期経営計画
1)中期経営方針
~世の中から必要とされる「優良企業」を目指す~
「より強靭な事業体の構築」
①ESG経営の強化
- 環境・社会への貢献
- 透明性の高いガバナンス
- サステナビリティへの取組み
- 全てのステークホルダーへの配慮(株主、従業員、販売先、仕入先、金融機関、政府・自治体、地域社会)
②少数精鋭かつ高収益体質の確立(地に足を付けた持続的な成長を図る)
- 人材確保、教育の為の投資(人的資本への投資)
- 省力化、省人化、システム化の為の投資
- 研究開発、技術力向上の為の投資
- 事業領域拡大の為の投資(M&Aを含む)
- 工場等の更新、能力増強、効率化の為の投資
- 安定的に当期利益10億円以上、ROE 8%以上の確保により、DOE 2.5%以上
2)中期経営戦略の骨子
①新規市場、成長分野における事業展開の強化(お客様のニーズや成長分野の拡がり等に対応するための取組み)
- グループの総合力を結集し、情報収集、調査・分析、開発、プロモーションを強化(マーケティング)、開発、プロモーションを更に強化
- 自動車業界のCASE進展における新技術、新機能への対応
- リチウムイオン電池関連の継続的な販売・推進
- 全固体電池関連の開発推進と実用化に向けた市場動向等の情報収集
- AI、IoT、5G等、世界規模の新技術や新規格への継続的な対応
- レンズを含む光学部品業界への販売拡大(技術開発力と品質の更なる向上)
- スーパーミキサーを軸としたプラスチック以外の業界(食品、医療、新素材)に対しての具体的用途開発と営業力の強化
- 地球環境に優しい新素材や複合材、リサイクル材への対応
- 通信規格や業界規格への技術面での対応の推進、強化
- 日本におけるマザー工場、研究開発センターへのアプローチと実積づくり
②既存市場、既存分野での販売拡大と収益力向上(既存の市場や分野でのお客様を堅守、拡大のための取組み)
- グループ全体における標準機(乾燥機、計量混合機、金型温度調節機、チラー、粉砕機)の市場での販売シェアの拡大
- グループ全体における押出成形分野等のシステム案件への取組みの強化、推進
- 地域や分野特有のニーズに対応した製品ラインナップの充実のための開発、販売
- 取扱い製品ラインアップの拡大による販売と収益の向上
- 省力化・省エネルギー・省資源化の実現に向けた積極的な提案
- Q.C.D.(品質・コスト・納期)の継続強化による競争力の高い製品づくり
- グループ間における、設計、製造、販売、サービスの情報の共有化と、地域毎、会社毎のミッションの実行と相互支援協力体制の強化
- 北中米でのアメリカ・メキシコ協働による自動車、自動車部品、ハイテク、医療業界を中心とした販売拡大と体制の拡充
- 提案営業力、技術力、サービス(ビフォー、アフター)力の向上による顧客満足度向上
③経営基盤の強化(持続的成長を図るための経営基盤への取組み)
- 透明性の高い企業統治(コーポレート・ガバナンス)の実現
- コンプライアンス意識の徹底による誠実な企業活動
- リスク管理の取組み強化とBCP対策への取組みの推進
- 優秀な人材・適正人員の確保と教育研修制度や育成方針の充実
- カワタテクニカルセンターを活用した教育や人材育成
- ダイバーシティ(多様性)への取組み強化
- 社内環境整備方針への取組みと職場環境の改善
- 業容拡大の為の戦略的投資の実施(M&Aを含む)
- 研究開発、人材開発への継続的な取組み強化
- グループ各社の連携による営業、マーケティング、サービス、設計、製造、技術開発、製品開発の強化
- グローバル人材育成のための制度・運用とグループ間人材交流の強化
- 生産・販売・サービス拠点、販売促進・技術力向上・人材育成の為の設備の継続的な見直しと再構築
(3)2023年度中期経営目標数値
2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | ||||
金額 | 売上高比 | 金額 | 売上高比 | 金額 | 売上高比 | |
---|---|---|---|---|---|---|
売上高 | 24,200百万円 | 100.0% | 24,800百万円 | 100.0% | 25,700百万円 | 100.0% |
営業利益 | 1,280百万円 | 5.3% | 1,340百万円 | 5.4% | 1,580百万円 | 6.1% |
経常利益 | 1,250百万円 | 5.2% | 1,310百万円 | 5.3% | 1,550百万円 | 6.0% |
(親会社)当期純利益 | 930百万円 | 3.8% | 970百万円 | 3.9% | 1,150百万円 | 4.5% |